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【FUN! インタビュー vol.2】「オリジネーター」社に聞く!外国人留学生が日本で学びたい意外な理由は?

外国人を対象とした旅行会社や人材業界のキーパーソンに話を聞く「FUN! インタビュー」。第二回は、2006年より企業向けに、外国人材採用支援や、留学生を中心とした外国人材就職支援事業を行う株式会社オリジネーター取締役 専務執行役員 工藤尚美さんに、最近の外国人留学生の就労事情について聞きました。



――まずは、外国人材の採用支援および就職支援事業をスタートしたきっかけについてお聞かせください。

オリジネーターがこの事業を始めたのは2006年1月からです。きっかけは、私がリクルートグループで勤めたあとキャリアチェンジし、13年ほど日本語教育と進路相談に携わっていたところから始まります。今でこそ留学生数が30万人に達していますが、当時は10万人もおらず、キャリアのない留学生が就職できる企業はほとんどなかったんです。彼らは志半ばにして帰国するわけですが、日本語能力が高くて成績優秀で、日本で働きたいと思っている人がいるのにもかかわらず、その人たちを日本はあっさり手放してしまうことがすごく残念に感じまして。そこで、私の最初の会社の先輩であったオリジネーター社長の長谷部に相談し、新規事業としてスタートしたのがきっかけです。



――オリジネーターといえば就職活動情報サイト「リュウカツ」が有名ですが、どんなサイトか改めて教えてください。

リュウカツは、「日本で働きたい」という留学生の皆さんが、希望の企業に就職できるよう、さまざまな情報を提供して応援する就職情報サイトです。2009年にスタートしまして、現在95か国の留学生が登録しており、アクティブで1万2000人の方が利用しております。


――95か国の留学生が登録! どのようなきっかけで彼らはリュウカツを知るのでしょうか?

まずは学校経由があります。私たちは留学生の就職ということにあまり目を向けられていない頃からサービスを提供していたので、日本全国の大学や専門学校に一早く周知できました。一番のきっかけは口コミで、各国のコミュニティや横断的な留学生のグループ内で、先輩が後輩へ、後輩がまた後輩へとつないでくれます。特にリュウカツは理工系留学生の紹介が強いので、研究室のつながりも大きいかなと思います。


――就職支援事業を通して感じる、最近の留学生の傾向を教えてください。

10年以上前は石にかじりついてでも日本に就職したいという人が多かったのですが、現在は、日本に残るか、それとも自国に帰って日本語力を活かした企業に就職するか、どちらか選んで進路を決める留学生が多いように感じます。日本の状況をとっても、リーマンショック直後から比べると経済は上向いている一方、労働人口が減ってきており、日本人のみの就職にこだわりすぎてはいけないと気づいた企業が増えています。その現状を留学生側も知っているので、就職先を選べる状態になっているといえます。



――留学生にとって、日本の魅力は何にあると感じているのでしょうか?

アジアの理工系学生に限ると、日本の技術を学びたいという人が多いです。自国の最高学府であっても学べる設備や研究機関がないという理由から、日本を留学先に選んでいるようです。欧米へ行くチャンスもあるでしょうけれど、日本は近いということでも人気です。特に女性の場合ですと、治安面でもご両親が安心されるみたいです。また、日本は観光地としても人気がありますので、ご家族が遊びに来るために日本を留学先に選ぶという人もいます。あとは理系文系に限らず、そもそも日本の文化が好きという人も珍しくありません。


――就職先はどんな企業が人気ですか? やはり大企業を選ぶ人が多いのでしょうか。

決してそんなことはないんです。日本の中小企業が素晴らしい技術と海外シェアを持っていることに、外国人留学生たちはすごく驚いています。中小企業の中には、事業継承が難しくなっていることを受けて、外国人材を中核として入れているところも出てきています。そういった意味でも、中小企業も日本人の採用にこだわらず、外国人材を採用する選択肢は必要なのかなと思います。日本の企業は99.7%が中小ですので、中小企業が日本を支えていることを発信していけば、外国人留学生の応募はさらに増えるのではないでしょうか。


――外国人材を受け入れている日本の企業は、彼らにどんなことを期待していますか?

最近の企業は、国籍に関係なく、企業が求める技術力のある方を選ぶ傾向にあります。アジアに拠点があるメーカーは、ブリッジ人材としての活躍も期待して採用していますね。優秀かつ日本語力が高い学生は、取り合いになっているんですよ。例えば日系企業の拠点が多いベトナムでいうと、首都のハノイはもともと日本語学習者と日系企業が多かった反面、南部のホーチミンはそこまで多くなかったのが、ここ数年で一気に日系企業が増えました。そこで、ハノイに住む日本語学習者の積極的な採用が増え、本当に人手が足りない状態です。


採用の基準でいくと、日本語力を重視する企業はまだまだ多いです。ただ、言語が得意なことは仕事のスキルとしては大事ですが、バックグラウンドにあるものを互いに理解することのほうがずっと大事であって。互いを理解することから生まれるプラスの作用があり、その作用を活かせている企業は、外国人材の受け入れがうまくいっています。



――外国人材の受け入れが成功しているのはどんな企業でしょうか?

たまたまいい人材がいて、その方がたまたま外国人でした、というケースが意外と成功しているんです。外国人が入社したことで「そんな見方や考え方もあるんだ」と、日本人社員側の意識が変化するそうです。相互に刺激し合って会社が変革できている例ですね。


――日本企業に勤めた外国人材からは、どんな反響をよく聞きますか?

入社した会社を気に入ってずっと働いている方もいれば、早々に離れる方もいて、本当に人それぞれです。彼らの目的も「楽しくのんびり続けられればいい」とか、「起業すること前提で就職する」とか、バラバラなんです。そんな中でもよく聞かれるのは、「早く仕事の権限を持ちたい」とか、「外国人だとしても昇格のチャンスを与えてほしい」という声ですね。


日本の企業は新卒社員を大事にしすぎるところがありますが、日本以外の方からするとちょっとスパンが長いと見られがち。大手企業は長期の研修期間があって、権限が与えられるまでに時間がかかります。一方、優秀な外国人材は、早く自分で動きたい、意思決定をしたいという欲求が強い人が多いので、そこのズレが発生しています。


――優秀な外国人材を逃さないためには、日本式の採用を一度見直す必要があるのでしょうか

すべて変える必要は全然ないんですよ。育ててもらえる環境をありがたいと思う留学生も、もちろんいるので。例えば、研修のやり方を変えるとか期間を短くするとか、外国人材の受け入れとともに元ある制度の見直しを検討してみるといいかもしれませんね。老舗企業ですと人事制度をしっかり決めているので、そこを崩しにくい現状がある。外国人材だけ特別扱いするということもできないですし、ずっと膠着状態でなんとかしなければと思いながら時間が経ってしまった、という企業も多いのではないでしょうか。今後、外国人材と協力しあっていくために、日本式の古い制度の壁を突破することが必要だと思います。


【企業情報】
株式会社オリジネーター
https://originator.co.jp/


2001年設立。2006年3月より外国人留学生就職支援事業を開始。外国人留学生のための就職支援サイト「リュウカツ®」運営、外国人材採用サポート事業など幅広く展開。
https://www.ryugakusei.com/

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