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越境ECとは? ~最新の越境EC市場規模とコロナ時代の海外販売成功のポイント~

アジア地域No.1規模の“日本好き”コミュニティサイト『FUN! JAPAN』を運営する株式会社Fun Japan Communications(本社:東京都港区、代表取締役社長:藤井 大輔、以下Fun Japan Communications)では、これまで長年のアジア向けマーケティングのノウハウを活かし、海外販売を手掛ける企業様を数多くサポートしてきました。最近は、特に「これから越境ECを始める場合、何から手を付けたら良いか?」というご相談を頂く機会が増えています。
この記事では、越境ECの魅力的な市場規模と、弊社で実施した様々な取り組みから分析した、越境ECを成功させるポイントについて解説いたします。


<目次>
1. 越境ECとは?

2. 越境EC市場の動向
① 現在の市場規模
② コロナの前後での市場の変化

3. アジアの越境EC 成功のポイント
① 各国目線での売り場づくり
② 必ず母国語を使用
③ 消費者の買い方の違いを理解したプロモーション
④ 適切な配送手段の選定
⑤ 高配送コストを踏まえた商品選定


1. 越境ECとは?

越境ECとは、「日本から海外向けに販売を行うEC」を指す言葉です。越境は「国境を超えること」、ECは「電子商取引(Electronic Commerce)」を意味しています。
コロナ以前も越境ECサイトを制作し、海外へ向けて販売を開始する日本企業は多くありましたが、コロナ禍以降、インバウンド需要・国内需要の減少により新たに越境ECを始める企業も増えてきています。


2. 越境EC市場の動向

① 現在の越境EC市場規模

経済産業省が2019年5月に発表した「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、世界の越境 EC 市場は2018年で約75兆円、2020年には約110兆円と予測されています。
特にアジア(・オセアニア)地域での成長が著しく、2014-2020年までの6年間で約6.7倍にまで成長し、世界全体の越境EC市場規模のうち、APACは約半分の約50兆円を占めています。


 


出典:Accenture


② コロナの前後での市場の変化

イギリスの大手越境ECサービスプロバイダーのGlobal-eが2020年5月に発表したレポートによると、世界全体の越境ECの伸び率は前年比11%(2020年4月)となっています。
一時期国際物流に大きな遅延または停止が発生していた時期があり、2020年1月頃から、コロナ前水準と比較して20~30%程度落ち込みがありましたが、物流機能の復旧により、現在多くの国において市場は回復しています。
パンデミックの規模や時期は国毎で異なるため、国毎に市場回復のスピードに違いはありますが、特にコロナからの復興が比較的早かったアジアにおいては、越境EC流通量の回復も早く、2020年3月時点で2019年12月と同水準まで回復しました。



出典:https://www.global-e.com/resource/covid-19-cross-border-ecommerce/


アジア各国では、今後もこのペースは緩むことなく、さらにECの市場規模が拡大していくと多くの調査会社が予測しています。
2020年3月に、アメリカの大手調査会社Nielsenがアジア11カ国を対象に実施した調査では、コロナのパンデミックが終わった後も、多くのアジアの買い物客はECでの非日用消費財(衣類、化粧品、電子機器など)の購入意欲が高いことが分かっています。



出典:https://www.nielsen.com/sg/en/press-releases/2020/covid-19-new-norm-consumers-behaviour-press-release/


一方、ロックダウンの開始が比較的遅かったアメリカでは、物流網の復旧が遅く、越境ECの回復にも時間がかかっています。2019年10月の流通量を100%とした場合、2020年4月は約80%にとどまっています。
しかし、過去10年間で急激な成長を遂げている越境ECの市場拡大が止まるとは考えにくく、物流網の回復とともに、アメリカにおいても徐々に回復していくものと考えられます。
また、これまではECでの販売に躊躇していたブランドが、ロックダウンやステイホーム推奨の流れを受け、オンラインでの販売、すなわち、D2C(Direct to Consumer)に乗り出してきています。感染者数がピークアウトした後は、ここ数年のD2Cブームがより一層加速していくだろうと注目されています。


出典:https://www.global-e.com/resource/covid-19-cross-border-ecommerce/


3. アジアの越境EC 成功のポイント

ここまでは、世界的な越境EC市場の盛り上がり、そして特に、アジア市場のめざましい成長についてご説明しました。
ここからは、アジアで越境ECの成功を収めるためのポイントについて、125万人規模の会員を保有し、自社でも越境ECサイトを運営する弊社のノウハウを基にご説明します。


① 各国目線での売り場づくり

海外、特に英語圏へ旅行した際、レストランのメニューに写真が少なく、分かり辛いと思った経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
ここにも、各国の嗜好の違いが表れています。日本人はECで商品を購入する際、特に写真による情報収集を好むということが分かっていますが、一方で欧米人は、写真や文字による情報量が多いメニューは「見づらくて安っぽく見える」と考えているようです。
実際、欧米向けのECサイトは、洗練されておりスッキリしたデザインのものが主流です。
一方、アジア圏の国々の消費者は、比較的日本人に近い感覚を持っています。ECサイトにおいても、写真を多めに掲載し、商品情報を充実させることが望ましいです。また、アジア圏の消費者は、価格弾力性(価格変化に対して需要や供給がどの程度の割合で増減するかを示す指標)が比較的大きいと言われています。
下記の例は、台湾の最大手ECモール「PChome」ですが、割引訴求(●折)が多く、比較的情報量が多い印象(日本の楽天市場TOPに近いイメージ)です。


参照:PChome 線上購物(https://shopping.pchome.com.tw/


② 必ず母国語を使用

海外旅行に行った際、不自然な日本語表記を見かけることが多いと思います。このような店で「あまり買いたいと思えない…」というのは、日本人でも外国人でも同様です。必ず母国語での訴求が必要になります。特に、越境ECにおいては、国を超えた配送や決済には不安感を抱える消費者が多いため、母国語での説明を丁寧に行い、消費者の不安感を取り除く必要があります。
また、多くの日本人が勘違いしがちなのが、中国語についてです。台湾・香港の消費者は、中国大陸で使用される「簡体字」も大体読むことができるものの、簡体字のサイトを好まない人がほとんどです。しかし、「簡体字」を台湾・香港人向けに使用してしまっている越境ECサイトも、残念ながらいくつか見受けられます。簡体字で台湾・香港向けにプロモーションをすると、逆に嫌悪感を抱かれてしまう可能性が高いので注意が必要です。
また理想的には、台湾と香港でもサイトを分けるべきです。同じ「繁体字」を使用していますが、微妙に用法が異なります。例えば、「カメラ」は、台湾では「攝錄鏡頭」、香港では「鏡頭」という表記になります。


③ 消費者の買い方の違いを理解したプロモーション

特に中華圏の消費者は、価格比較を細かく行う傾向があります。まずは買い物かごに商品を投入したり、お気に入り登録をしたりしてから、色々なサイトを見て回り、最終的に一番安いサイトで購入を決めることが多いです。従って、比較的買い物かご投入までのハードルは低いので、買い物かごに投入させた後にどのように実購買をさせるかという工夫(プッシュ機能、カゴ落ちメール配信など)が必要です。
弊社が運営するECサイトでも、買い物かごへの投入~購入までの期間を国別に比較すると、台湾人が一番長いことが分かっていますが、その背景として、中国・台湾を始めとするアジア各国では、「ソーシャルバイヤー」と呼ばれる代理購入プロフェッショナルの存在が挙げられます。ソーシャルバイヤーは、自身のFacebookやLINEでクローズドなグループを作成し、グループの参加者向けに個人輸入した商品を販売している、いわゆるC2Cモデルで商品販売を行うバイヤーです。
ソーシャルバイヤーは、自身の得意な領域(女性向けアパレル、キャラクターグッズ…など)に独自の仕入れルートを持っており、そこで仕入れた商品を、自国の消費者に対して販売しています。ソーシャルバイヤーは、自国に住んでいる人もいれば、他国に住んでいて居住国の商品を取り扱っている人(例 日本人と結婚して日本に住んでいる在日中国人)もいます。20~30代の在日台湾人10人のうち、2~3人はソーシャルバイヤーをしているくらい一般的とも言われています。
特に、台湾の消費者はソーシャルバイヤーから購入することに慣れているため、まず欲しい商品があるとソーシャルバイヤーに相談したり、ソーシャルバイヤーのおすすめ商品の中から好みの品を見つけたりします。ソーシャルバイヤーは個人で調達を行なっているので、関税がかからない(厳密には、かからない可能性が高い)ことは勿論、上乗せする手数料も一般的にそこまで高くないため、台湾の消費者は比較的安価で日本製品を手に入れることができるというわけです。
このように、既に複数のソーシャルバイヤーから多数の日本製品を購入できるエコシステムの存在が、中華圏の消費者が価格比較や価格交渉に長けている一番の理由と考えられます。


④ 適切な配送手段の選定

配送手段に関しては、大きく2つ存在します。
1つは国際宅急便、もう1つはEMSを始めとする国際郵便です。前者の場合、民間の物流会社(ヤマト運輸、DHL、ECMSなど)、後者の場合は日本郵便のEMSやeパケットなどを起用することになります。両者は主に、①通関の仕組み、②荷物の大きさ・重さ・内容物の制限、③配送スピード に違いがあります。
まず通関の仕組みについてですが、国際宅急便の場合、各配送会社の通関士が申告を行います。その際、内容物の内容を細かく記載したインボイスが求められるのが一般的です。一方の国際郵便の場合は、個人の利用が多いため、一般の貨物と違って逐一税関に申告を行う必要がありません。ただし、全ての荷物について申告が不要という訳ではなく、サンプルチェックは行われます。
また、国際郵便の場合、内容物の合計金額は20万円未満という制限があるため注意が必要です。一部の民間物流会社では、国際郵便では配送不可の商品を送れる場合があるなど、大きさ・重さ・内容の点で融通が利きやすい場合もありますが、その分、料金が割高になる傾向があります。
配送スピードについては、国際宅急便の方が早い場合がほとんどです。なお、国際郵便の場合、EMSとeパケットでも異なります。商品の内容に応じて、適切な配送方法を選定することが必要です。


⑤ 高いコストを踏まえた商品選定

日本が島国のため、特に配送コストは高くなります。上述の通り、配送方法によって差はありますが、例えば比較的安い国際郵便のeパケットで1kgの小包をアジア宛に送る場合でも、約1,500円程度かかります。高い配送料を薄められるだけの客単価にしなければいけないので、商品単価を上げるだけでなく、個数を増やしてセット売りにしたり、まとめ買いを促したりなどの工夫が必要です。
また、配送コストだけでなく、関税やその他追加費用についても念頭に置いておかなければいけません。例えば、書類不備のために税関が通関を許可できずに荷物を保税倉庫で保管した場合、配送業者より保税倉庫保管料が請求される場合があります。こうした不確実な費用が発生するリスクも鑑み、許容できるリスクのレベルを見極めながら、事業計画を立てることが重要です。

越境EC、特にアジア向けの越境ECには非常に大きなポテンシャルがあります。
しかし、成功のポイントは国内ECとは異なる点が多く、なかなか一筋縄ではいきません。弊社が越境ECのサポートをさせていただく場合には、まず低コストでECサイトを立ち上げ、PDCAを回していきながら商品数や展開国を徐々に増やしていくことをお勧めしています。基盤の選定においても、現在はShopify、Launchcartなど、比較的安価でECサイトを構築可能なプラットフォームが存在していますので、それらを活用することで効率的なサービスのローンチが可能です。


いかがでしたか?
弊社Fun Japan Communicationsでは、これまで数々のお客様の初めての海外販売をサポートして参りました。単なる”販売”ではなく、商品やブランドのストーリーを海外消費者に“理解・共感”してもらう事をモットーに、様々なジャンルの商品を海外へ送り出しています。


まずはお気軽にご相談ください。はじめての越境ECをトータルサポートいたします。


[Fun Japan Communicationsについて]
アジア地域No.1規模の”日本好き”コミュニティ『FUN! JAPAN』を運営(2020年10月時点のWebサイト月間ユニーク訪問数202万人、 Facebookファン数465万人)。現地消費者目線で多国展開する『FUN! JAPAN』の圧倒的メディア力と、そこで蓄積されたデータ、さらには消費者との直接的な繋がりを基にデジタルとリアルの施策を組み合わせ、100社以上のお客様に対して訪日や海外商品の売上拡大をサポートしています。

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